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グッバイ・クルエール・ワールド~新たなる旅立ち~

ときに熱くなったり、冷たくなったりするブログ

大林宣彦監督”この空の花”についての話 その一

映画
 
(この文章は去年、大林宣彦監督"この空の花"を観た後、当時やってたブログに載せた記事です。パソコンにデータが残ってたので再度加筆・投稿しました)

 現在、毎週地上波TVで映画を流す番組はほぼなくなったわけだけど、俺らが小・中校生くらいまでは日曜洋画劇場、月曜ロードショウ、あと金曜ロードショウなどで洋・邦画の数々を観ていたもんだった。で、特によく再放送されてたのは80年代に全盛を極めた、当時のアイドルが主役を務め角川書店が中心になって作られていた"角川映画"といわれる一連の作品群、その中でも大林宣彦監督、主演・原田知世の"時をかける少女"は傑作として何度もTVで放送されていた…ような気がする。気がする、というのは観る機会はかなりあったはずのその"時を…"を実はちゃんと観た記憶がないのだった。
 
原田知世
KADOKAWA / 角川書店
2014-12-05


 映画好き、を自称するものなら"時を…"を筆頭に大林監督の尾道を舞台にした映画の数々に魅了されていてもしかるべきだったはずなのだが、今の今までどうも俺は大林監督の作品にはほとんど触れないままできてしまっていたことに今更ながら気づいた。
 それは若かりし頃『邦画より洋画のほうがイケてる』信仰的なものも多分にあったし、また大林作品にある、どこか夢見がちな映画少年チックなとこがどうも甘ったるく感じてしまっていた、つうものあったのだ。

 しかし今年に入って気鋭の美術評論家・椹木 野衣、"片腕マシンガール"などの遊び心溢れる映画を量産している井口 昇、またアイドル批評などで有名な中森 明夫などが自身のツイッターで監督の最新作"この空の花"を異例ともいえる絶賛しているのを読み、正直今まで関心が薄かった大林映画がどうにも気になって仕方がなくなってしまったのだ。
 さて現在74歳、確固たる巨匠の地位を確立し精力的に作品を撮られている大林監督だが、80年代"尾道映画"を撮っていた頃のまさに時代の寵児的な存在だった時に比べると残念ながらかつてほどの注目度は少なくなっていたように感じるのは俺だけだろうか…などと思いながら、この機会に折角だから"この空の花"の公開されるまで大林映画を予習しようと思い立ち、まずDVDで観たのは2008年、角川映画として製作された"その日のまえに"。いやぁこれがなんとも奇妙な映画でして(笑)
 
南原清隆
角川エンタテインメント
2009-06-05


 原作は重松清氏の連作短編集、病気になり余命いくばくかの妻とその旦那の愛の物語…のはずなんだが、
時間軸が交錯してかなり突飛な進行になってる構成がまず変!
意味もなくイマジナリーライン(二人の登場人物をそれぞれ切り返して写す時に、その人物間を繋ぐ線をカメラが超えてはいけない、という映画の中のお約束)を無視するのが変!
車中のシーンで窓の外の風景をわざわざチープなマット合成にしてるのが変!
そしてなによりエンディングに近づくにしたがって原作にはない(らしい)宮沢賢治に関するエピソードを大幅に挿入、結局なんの話だったかよく分かんなくなるのが変!

と、普通に撮ってりゃ感動的な映画になるのに、良くも悪くも引っ掛かり度満載な作品に仕上がっていたのだった。

 これで"抒情的""ノスタルジー""センチメンタル"といった大林作品に抱いていたイメージがちょっと揺らいでしまったわけだが、調べてみると出発点は8ミリでの自主製作、その後黎明期のCM監督として数々の新しい試みを行っていた、元々は実験精神旺盛な人なのだ。それが如実に表れているのが彼の商業映画処女作"HOUSE"。これがまたとんでもなく自由でアナーキーな映画だったんですわ!!

池上季実子
東宝
2001-09-21

 スピード感のある物語展開、当時の最先端だった(今ではチープに見える)特殊効果をふんだんに使った『んなアホな!』と思わず叫ばずにはいられないシュールかつバカバカしいギャグの連発、で今や美熟女である若き日の神保美喜がなんでかほとんど下半身パンティー一枚でアクションシーンという意味不明さ(笑)。これで完全に大林監督に対するイメージは完全に"無邪気なトンデモ映画を作る"人へと溶解したのだった…

 その流れでいえば1989年に製作された"北京的西瓜"は、監督のまた新たな一面が垣間見れる作品だった。中国からの留学生に安価で野菜を提供していた実在の八百屋さんのお話をモデルになった実際の店舗の三軒隣にセットを組み撮影、広角レンズの画面に映された数多くの登場人物が一斉に台詞を話し出す、極め付けはその当時起こった天安門事件で中国ロケが不可能になったことを俳優に話させる、という前代未聞な演出というドキュメンタリー的なスタイルはファンタジーな要素が強い他の作品とはかなり異質であり、大林監督ってこんなのも撮るんだ、とビックリさせられたのだった。
 
ベンガル
パイオニアLDC
2001-09-21


 ふ~…で、そんな予習を踏まえてやっと観れた"この空の花"の話に移るのだが、いやぁこれは各所で"問題作だ"と言われているのが納得、一応事前に情報を仕入れていた俺でも"なんじゃこれ…"と絶句してしまうような、まぁ実に怪作だったのですよ。 

 これは俺なんかが下手に説明するより、この映画を観たとある方の興奮気味のブログを読んでいただくほうがいいかもしれない→(大林宣彦監督「この空の花」が超問題作!じじいがすごいことをガツンとやった!
 まぁほんとにここに書かれているようにワンダーすぎてついていけない…と感じるとこが多々あったのだが、前作"その日のまえに"の奇妙な映像処理と演出、"HOUSE ハウス"の突拍子無さ、そして"北京的西瓜"の現実とフィクションを衝突させるとこなんかを踏まえてると、ある意味大林映画の集大成的な作品になってるな、と思ったのだった。(逆に言えば監督の過去の作品をあまり観てない状態だったら完全に置いてけぼりになってたであろう)
 あとこの映画、平和と自由を愛する監督の生真面目な部分が出過ぎてて、ちょっと"お勉強"している、つうかさせられてるように感じるとこもあったんだけど、"ふたり"に出演していた富司純子がここでも素晴らしい演技をしてたし、またパスカルズと坂田 明が演奏で登場する大団円(とわざわざテロップが出てくる(笑)の花火のシーンは、過去・現在・未来そして死者と生きる者との交流を常に描いてきた大林監督独特のマジカルでスペクタクルな演出が冴えわたった、実にとんでもない高揚感に満ちたものであったことは声を大にして言っときたい。マジで鳥肌が立ったよ。


この空の花 -長岡花火物語 (DVD通常版)
松雪泰子
ビデオメーカー
2014-04-08



 
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