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グッバイ・クルエール・ワールド~新たなる旅立ち~

ときに熱くなったり、冷たくなったりするブログ

福岡にある”宅老所よりあい”を描いた本『へろへろ』のこと

本・雑誌

以前このブログで福岡にある老人介護施設”よりあい”についてしか書いてない、というなんとも不思議な雑誌『ヨレヨレ』のことを取り上げた。

 

gubakuruitich.hatenablog.com

 

熊本市新町にある本屋さん”長崎次郎書店”がこの『ヨレヨレ』を取り寄せてることもあり、今まで出てる4号は全てコンプリートしている(仕事帰りに立ち寄れる本屋があるのっていいよね)。普段なかなかその内実を知り得ない老人介護施設の日常をユーモアたっぷりに綴られた内容もだけど、ここまで作り手の趣向が剥き出しになってる雑誌って他にない、という意味でもほんとに面白くて、何度も読み返したりしてる。

 

さて、その作り手である編集者・鹿子裕文氏が去年本を出版した。それが『へろへろ』

 

へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々

へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々

 

 

 

1991年、ひとりの独居老人のお世話をするためにお寺を借りて3人の介護士がデイサービスを始めたのがそもそものきっかけ。その後、ボロボロの古民家を改築し″宅老所よりあい”がスタートする。

 

この本は”よりあい”の創成期から理想の特別養護老人ホーム建設のため約3億(!)近いお金をほぼ寄付とグッズの販売でかき集めた、という驚きの一部始終が綴られている。

 

バイタリティーの塊のようなスタッフたちが資金集めに奮闘する姿は、涙ぐましいとすら言えるほどで実に読み応えがあったのだけど、それに加えて個人的にグッときたのは、ひょんなことからこの”よりあい”に携わることになった、著者である鹿子氏の内面が吐露される場面だった。

 

東京で編集者として働き、福岡に戻りフリーになったはいいものの仕事がなく(選り好みしすぎ、な節も感じられるが笑)、自ら言うところの売れっ子ならぬ”干されっ子”だった鹿子氏。そんな崖っぷちに立たされた中年男が”よりあい”と出会い、ずっぽりと関わり、スタッフから「あなたが作った”よりあい”の雑誌を読みたい」と依頼され、次第に再生していく姿…

 

”ジャーナリズムに通常求められる客観性よりも、自らを取材対象の中に投じてその本質を伝えることを重視する”、というゴンゾー・ジャーナリズムってスタイルがあって、この”へろへろ”なんかはまさにそうなのだが、それ故に良くも悪くも鹿子氏のクセ・思想が前面に出てる語り口にちょっと戸惑ったりもするんだけど、いい意味でそれが独特過ぎる介護施設である”よりあい”の魅力を伝えるのにはハマってると思った。


もちろん年々切実度を増してる日本の老人介護の問題を考えさせられ本でもあるけど、登場する人たちがカラッとしてるからか読後感がなんとも爽快なのだ。ここに一抹の希望があるような気すらしてくるし、読む者に沸々と元気を与えてくれる、そんな本ですよ。


 福岡に立ち寄った際は是非この”よりあい”に行ってみたいって気分になること間違いなしの感動作。あとこれ、映像化してほしいよね。もっといろんな人にこの本の存在をしてほしいな。